・気になっている事・

 いつも気になっていることがあります。家を建てようとされている方は、どのような過程で我家の完成にまでたどり着くのでしょうか。建築を生業としている私の友人達の多くですら、ハウスメーカーの設計施工で家を建てました。理由は設計事務所に依頼すれば設計監理料も必要になり、きっと予算に合わない筈だとのことでした。
 私は心のなかで「愚かだなあ、そんな事はないのに」とつぶやきましたが、何の反論もしませんでした。何故なら、彼らにとって家を建てることは、車を買うこととほとんど同じレベルで、オプションをどうするか、というようなことなのかと感じたからです。
 家を建てることにその程度の夢しか持てない人たちに、すぐ近くに別の世界を手に入れる方法もあるのだよと語ってあげるべきだったのでしょうか。

 家というものは、自分自身をとり戻したり、家族の一体感を確認し合える場であると考えます。そして、場合によっては、もっと健康になれたり、もっと心豊かで穏かな性格に変えられたりする可能性もあるのではないかと考えます。
 私にとってローコスト住宅は常に取り組んでいるテーマであり、与えられた予算とは四六時中、格闘しているといっても過言ではなく、依頼を受けた住宅の大半は現実にそのような過程を踏んで竣工しています。何がそうさせているか、そのエネルギーはどこから来るかといえば、建築主の夢や想いをひしひしと感じるからです。
 ですから私にとって、住まいに夢や想い、或いはこだわりを懐かれている方こそが建築主であり、本当に心を豊かにしてくれる住まいは、そんな方にしか実現出来ないと考えています。

  建築写真2
建築写真

・どのようなことを心掛けて建築の設計に望んでいるか?・

 ある建築をみて感情がふるえるのを覚えたことがあります。また建築の佇む情景をみて懐かしさを覚えたことがあります。それは忘れていた感覚の扉がおだやかに開いていくようでした。その体験は自然の景色を観たときの感覚の開放とは異なり、いわば、ひとの痕跡に共鳴したとでもいうのでしょうか。
 どうやら、手探りで求めていたものは、ひとに潜在している感覚をときはなつような空間を夢みていたようです。

 快い空間・心地よい空間・居心地の良い空間・・・・・同義語のようですが、人の気持ちの状態は様々ではないかと考えます。リラックスして楽しくなる空間であったり、リラックスしていて五感に刺激を受ける空間もあります。建築は空間の組合せではなく、ひとがどのような気持ちになれるのか、という場の集合体が建築、或いは住宅であると考えています。



・設計した建築にはどんな特色があるか?・

  建築設計にたずさわって10年位はやはり「かたち」にこだわっていたようです。いまは、自然に湧きあがるイメージで生まれたものが、良い答えを導きだすのではないかと考えています。またシンプルなものほど良いと考えていますが、与条件によって逆にシンプルであることが難しい場合もあり、初めにこだわりを持たないようにしています。
設計した建築のジャンルは様々ですが、やはり住宅系が多くを占めています。
どんな建物においても共通しているのは、決して高価ではなく、ありきたりで、しかし、選ばれた素材によるシンプルな構成です。
切りとられた開口を通して、光や風と素材が織りなす空間がひとにどのように語りかけるのか・・・・・が共通のテーマです。
素材感をどのように表現するか、また異なる空間同士をいかに結び付けるか、内側の領域を外側の領域へいかに開いていくか、敷地の領域が周囲の環境とどのような関わりを表明していくか等・・・・・それぞれ個別に強く配慮している点です。


2.設計を行う際に重視するポイント ▶
3.本設計までのワークフロー(基本準備項目) ▶
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