よく、住宅の設計が一番難しいと言われます。それは多くの場合、敷地の条件や予算の制約が厳しく、住まい手のライフスタイルや価値観も多岐にわたり、さらに、理屈では割り切れない独自の「こだわり」が存在するなど、解決すべき要素が多いことが理由にあげられます。
しかし、実際には設計者側にも独自の価値観や「こだわり」が有り、建築主とのこれらの意識のズレが住宅の設計を難しくしている大きな要因ではないかと考えています。 勿論プロですから一つの価値観に縛られず、他の価値観を理解する訓練は積んでいる訳ですが、価値観が同じような建築主との出会いは、どんな困難な問題があっても、解決への道のりはむしろ楽しくさえある、との経験がそのように思わせます。
ですから、建築主が本当に満足のいく住宅を所有する近道は、価値観が共有できるような建築家を見出すことだと言えます。問題はその出会いの場がどこにあるかということですが・・・・・。
余談ですが、今、建築家側もいろいろな方法で懸命に情報発信しています。出来るだけ情報を集めて、遠慮なく問い合わせてみることです。私の知る限り、大概の建築家は敷居も低く、親切に応対するはずです。その中でコミュニケーションがうまく取れ、信頼関係が生まれると感じた建築家を選ばれれば良いのではと考えます。
以下に私の基本的な考え方を集約しますと
・ 住宅一般の既成概念に囚われない。
・ 健康が第一であること。
・ 住まい手の要望をうのみにしない。
・ 住まい手の今までのライフスタイルを間近に見る。
・ 住まい手のライフスタイルの対極も念のために提案する。
・ 将来の住まい方の変化を必ず予測しておく。
・ ロケーションや場所性の読み取り。
住宅とは異なり、利用者は来訪者であり、建築主は事業主という立場になります。事業主は客観的な立場で要望事項の提案ができそうですが、案外、目先の事業採算性に流されがちです。しかし、用途はさまざまでも、来訪者は目的を持って来る訳ですから、その目的を通して、顧客に満足してもらい、リピーターになってもらえるかというコンセプトに集約されると考えます。
・ 顧客の視点に立った計画であること。
・ 顧客満足のために何が提供できるか。
・ 地域性を読み取り、心地よいアイデンティティーが表現できるか。
・ サービスと予算のバランスをとことん検討しているか。
・ 不特定のさまざまな人が利用することを忘れないこと。
多岐にわたるジャンルの建築を一括して説明することは難しいですが、所有者または利用者にいかに愛着を持って使用してもらえるかに集約できると考えます。愛着が持てるということは、即ち、心地よい空間であるということです。
かってインテリジェントビルと称され、すべての設備を24時間完全自動制御により快適であるはずとされる建物で、オフィスワーカーにビルディングシック症候群発症の恐れが警鐘されたことがあります。一元的な快適性や効率性を求めるあまり、ワーカーの希望や健康のことをどこかに置き忘れたのでしょう。建築共通のことですが、あくまでも人をまんなかに見据えた機能やデザインでなくてはならないと考えます。
・ ロケーションや地域性の読み取り。
・ 今の機能性は必ず変化するものと認識すること。
・ 将来に変化するものと不変のものとを可能なかぎり予測すること。
・ 将来の変化に備え、可能な限りゆとりをもたせること。
・ 建物や設備面のメンテ及び変換が容易な計画であること。
・ 人の健康が第一であること。
・ 不特定のさまざまな人が利用することを忘れないこと。