高槻市の北部の丘陵地に造成された住宅団地である。
付近は郊外の空気が漂い、木造モルタル住宅の家並が続く。
敷地は造成の端地で、底辺約31m、短辺約9mの鋭角な直角三角形に近い。
長辺にあたる北側は長さ33mに渡って幅員約6mの道路に接道している。
道路と現況地盤面とは約2.5mのレベル差があり、間知石擁壁で造成されていた。
1.5m程高い南側隣地は、官舎の団地であり、オープンな状態が当分は保持されると予想できた。
敷地条件を把握した上で、オーナー自らが要望事項を、うまく纏められていた。
父親同居の家族構成から、一種の二世帯住宅であり、浴室等は共同で、晩餐も一緒にするが、
父親のエリアの独立性を考慮すること。
敷地の形状やレベル差から見て、地階は2台分のガレージと玄関及び書斎等、1階はLDKや水回り、
及び父親スペース、2階は子供や寝室スペース等の住居構成としたい。また収納スペースはできるだけ多くほしい。
坪庭でもいいから植栽スペースがほしい。また大きな庭は取れないので2階のどこかを屋上デッキテラスとしたい。
外まわりは、落着きがあり、シンプルでかつエレガントなものとしたい。
要望事項は的確であり、平面計画は比較的スムースに進めることができた。
しかし法的な建築制限が厳しい上に、鋭角三角形でレベル差のある敷地形状は、立体的な調整には相当に手間取った。
構造は地階RC壁式構造、1、2階木造在来工法である。
この家の特徴的な部分を挙げるとすれば、3帖分程の坪庭であろう。
地階から地上2階まで吹き抜けたこのスペースは、地階にあってはドライエリアとして、
1階にあってはリビングと父親のエリアとの間合いとして、2階にあってはデッキテラスの広がりとして機能し、
各エリアに光と風を穏やかに供給している。
平面計画上でもう一つユニークな部分は、ダイニングと2階の子供部屋とを繋いだ吹抜である。
より多くの通風と採光を促すほか、家事をしながら、子供の気配を間接的に感じとれる装置ともなっている。
2013.06.03