神戸六甲の市街地。山手幹線道を一つ山側に入ったところ。
敷地の地盤面は南面する道路より2mほど高く、南北に細長い敷地形状である。
周辺は震災を境に新旧の住宅や空き地が混在し、いわば震災後の神戸の市街地に共通した情景であった。
新たに購入された土地で、ご両親との二世帯の住宅新築である。
互いの領域で生活の気配が相互に伝わらないようにしたい。空気が自然に流通するような、夏涼しく、冬暖かい家。
モダンでクールな感じよりも、温かみがあり、落ち着けるインテリアが良い。
両親は年配なので、スケジュールはゆっくり目でよい。
予算は限られており、出来るだけローコストとする。
奥行が南北に細長い敷地形状において、通風や採光など居住性を検討していくと方向性はコートハウスとなる。
道路との高低差を考慮すると、道路からのアクセスは地階からが素直であり、地階は共用の領域、
1階を両親の領域、2階を夫婦の領域とし、垂直移動は階段の他にホームエレベーターを設置した。
そして中庭と言えるほど広くは無くとも、地階から2階までをつらぬくライトウェルを建物の中央部に据える。
この光と風のシャフトスペースは建物の隅々までを息づかせる。
構造は地階部をRC造、地上部の1、2階を木造とする。耐震性と居住性の観点からみて、適切な混構造である。
この家が建って早8年が過ぎた。地階は夏は涼しく、冬寒い。2階は夏暑く、冬暖かい。1階はその中間で適度に快適そうである。
年配のご両親が新しい家に転居して住むのは大変にストレスが生じることと心配していたが、上下階に部屋のある1階で、念のために床暖房も設置し、非常に快適とのことであった。
まだ幼かった息子さんの部屋は、特に設けていなかった。地階のスペースか或いは小屋裏スペースを工夫することになるのか。
年月が経ち、住まい方の変化に伴い、この家はどのように応えていくのか。
2013.05.29