ABITA Greggio
ABITA Greggio1

 阪神甲子園球場の北東に位置し、 幹線道路から一筋入った比較的落ち着いた住宅地である。
 敷地は西側と北側で接道する角地であり、そして北側道路は公園に面している。
 従前はなかなか風情のある木造のアパートが建っていたが、震災で全壊となり、更地の状態であった。

 震災後、数ヶ月経って再建の依頼があった。
 ワンルームマンションではあるがゆとりを持ったもので再建したい。
 採算だけではなく入居者も納得する想いのこもった内外のデザインとし、 空間的にも平凡ではない構成とすること。
 小さな薬局の店を一つ組み込むこと。
 内外ともコンクリート打放し仕上を納得のいくコストで、やりとげる施工業者を選ぶこと。 そして監理業務を遂行すること。

 ワンルームマンションも広くないと需要に応えられないことには気づいていた。 附置義務駐車台数という行政の縛りもあり、すべてを広くすることには限界があったが・・・。
 薬局の店舗は北西の道路の隅に定める。その東側をエントランスとする。 コンパクトに駐車台数を確保するために、道路に直接面するその他の部分を駐車場として配置する。
 公園に面する北側と南側隣地に向けて1棟づつ住戸棟を配置する。南北棟の間に可能な限り広い中庭を取る。
 エントランスから各住戸へのアクセスは中庭を通って階段を利用し、 2、3階は中庭上部に架かるブリッジを渡って各住戸に至る。 中庭は入居者が必ず通るオープンスペースとして機能する。

 工事は夏場に渡って行われたため、打放し仕上の精度を保つ努力は施工者・各職方・監理者が一体で 取組む必要があり、大変だった。
 出来上がった内外とも打放しコンクリートの建物の存在感は相当なものがある。 入居者にも好評で、オーナーも建物に愛着を持たれて常にメンテナンスされており、綺麗である。
  孟宗竹が垂直に伸びる中庭のオープンスペースは、1階から3階まで光が差し込み、建物の一体感を生みだし、 内部空間に潤いをもたらしている。しかし外部からはこのような中庭の存在は分らない。 中庭の気配だけでも外部に向って醸し出せたほうがよかったのか。

2013.06.04