Abitazione里中
Abitazione里中1

 西宮市南東部の下町情緒漂う、古く静かな住宅地である。 敷地は南面と東面で接道する角地で、東西に長い形状である。
 従前は木造のいわゆる文化住宅が建ち、震災にもなんとか耐えたが、経年劣化が著しく、 解体されて更地の状態であった。

 単身者向けのマンションではあるが、 行政の定めるワンルームマンションの規定面積よりもずっと広めの各住戸とする。
 余分な設備は削るが、入居者がコンパクトに生活を楽しめるような内部空間を追求すること。
 内外ともコンクリート打放し仕上を基本とすること。

 オーナーは内外ともコンクリート打放しのマンションをすでに所有されており、 その特性と魅力をよく理解されていた。
 コンクリート打放し仕上が基本であるが、今回は金属や塗装を組み合わせてみた。
 プランは検討を重ねる内に、南道路に向けて各住戸を素直に連続させる計画案が、この敷地に対応した最適案であることを得心した。
 建物の中央部にエントランスを配置し、南から北に突き抜け、裏庭を巡りながら階段へたどり、北廊下から各住戸に至る平面計画である。
 屋上は勾配屋根とし、3階の各住戸の棟部分にロフトを設ける。
 造付けキッチンをインテリアの中心に据付け、天端にタイルを貼る。楽しく食べることは、快適な生活の基本である。

 内外ともコンクリート打放し仕上は、型枠の施工を念頭に入れておく必要がある。壁面形状は必要以上に複雑にすることを避け、シンプルに納めることに集中した。
 コンクリート打放し・金属・塗装のコンビネーションは優しい雰囲気が漂う。逆に言えば打放しだけの力強さに欠ける。
 タイル貼の造付けキッチンはやはり部屋を楽しい雰囲気にしてくれる。
 裏庭に孟宗竹やトクサ、シャガなど和の雰囲気のものを植栽した。環境が合ったのか、生き生きしている。

2013.06.04