敷地は神戸駅前の界隈である。この辺りは主要業務地区として、多様な経済需要に応えてきたが、産業構造の変化に伴い、現在は職住混在の様相を呈している。当地も高層マンションと高層オフィスが隣接して建ち並んでいる。
計画に当たり、オフィスやホテルも候補となるが、土地広さ・形状・近隣の状況等を検討し、賃貸集合住宅が素直で持続可能な計画であると結論された。
交通至便な当地の特色を生かし、1~2人が快適に居住できる住戸形態が相応しいと考え、40㎡程度の少しゆとりのあるワンルーム形式の住戸とした。
(設計メモ)
住戸の配置は道路に沿って北面2住戸、東面2住戸とし、ワンフロアー当たり4住戸の地上10階建とした。南北の既存マンションとの距離や開口部の位置関係には特に留意し、相互の住環境保全に努めた。
各住戸は、素朴な味わいの床板と壁・天井のシンプルな塗装の構成で、什器や設備機器にもこだわり、ゆとりと落ち着きのある質感を演出した。
外装はコンクリート・ガラス・金属による構成で、街並みに素材の存在感を際立たせ、アクセントタイルでリズム感をつけ加えた。タイルはすべてアースカラーで、やはり素材感にこだわった。
近隣建物は概ね10~15階建てのタイル貼外装であり、色調も様々で街並みとしての統一感は乏しい。しかし天空率による新しいマンション等では、より高層化への効果として道路に面するオープンスペースは確かに広がり、街並みに奥行が生れていることは実感できる。
この建物も天空率により街区北東の角地に少しまとまったオープンスペースが生まれ、自然石の石組と野趣のある植栽を施した。道路際やアプローチ際の限られたスペースについても山野の道端のイメージで、ひと息、やすらぎの気配を流した。
2019.06.21