阪急岡本駅の南西近傍に位置する。敷地は南北に長く、最大高低差約2.5mで北側と西側に接道する角地である。
駅前から延びる南北及び東西の細い沿道には、雑貨、ファッション、料理などの瀟洒な店が軒を連ねる。
岡本界隈は大正時代末期から電鉄開通による住宅地開発や、在住の実業家などによる教育施設の開設などにより、阪神間有数の文教地区となっていく。
放置自転車を一掃するための施設であるが、岡本界隈は景観への関心は特別強く、地元に受け入れられるデザインを提案すること。
敷地周辺の道路は狭隘であり、安全性や工事資材の搬出入を十分に考慮した構造と工法を提案すること。
敷地の高低差や取り付きの道路を考慮したプランを提示すること。
敷地の回りは住宅地であり、圧迫感のない建物とし、可能な限り建物の周囲に緑地を取ること。
接道状況、高低差など敷地の特色を検討していくと、自ずと方向性は見えていた。一番高い北側道路からアクセスし、そのレベルを1階とし、そこから地階および2階へのスロープを設ける。出口は一番低い南西の接道部にも配置する。
地下1階地上2階建ての建物として高さを押さえ、2階の東西方向はセットバックさせ、極力圧迫感のない建物とし、周囲に可能な限り広いオープンスペースを確保する。
構造は進入可能な小規模重機でも施工できる鉄骨造とし、外壁はセメント版を張り、開口部は通気性と周囲との穏やかな調和を考えて、ルーバー窓やガラス窓の形状を選び、リズミカルに配列する。
建物周囲のオープンな緑地には四季折々の草花を配植する。
最初はただの自転車置場程度に考えていたが、岡本商店街のまちづくりへのこだわりは強く、建物をいろいろな面から岡本界隈に寄与するに足るデザインを求められていることに途中から気づいた。
その意味では、もっと検討の時間が必要であったかもしれない。
植栽は安全性やメンテナンスの事情から、高木類は少数で下草もあまり魅力的なものがないのは残念である。
2013.06.04